さっきぃの休息所

大学生になり、今までの生活が一変する中で、自分が感じたことや悩んだこと、経験したことなどを綴っていきます。

シンガポール国際学会記~英語力0でも愛想で乗り切った話~【第3話】

【3-1】発表当日

 いよいよ発表の日になりました。

 この発表のために、受験期でさえやらなかった英語の勉強もずっと続けてきました。授業もある中必死に準備しました。この苦しい4か月を早く終わらせたいという気持ちでいっぱいでした。

【3-2】朝食はなし、会場に到着

 実は、しれっとこの日は朝食なしでした。先輩が「食べなくていいんじゃない?」と言っていたのが大きな理由ですが、正直僕も「食べる時間があるなら準備したい」と感じていたでしょうし、これでよかったと思います。

 前日コンビニで買っていたチョコパイをほおばって、ホテルを出ました。

 

 会場には7時半に到着しました。かなり早いですが、開始が8時15分なので仕方ありません。

 会場は昨日の下見の時とは違い、しっかり準備が整っていました。部屋ごとに、正面には登壇者用PCとチェアマン用の席、プロジェクターがおかれていました。席はざっと150以上はあったと思います。びっしり並んだ空席をみて、これから登壇するという実感がぐっと湧いて、震えが止まらなくなりました。落ち着きが無くなったといった方がいいかもしれません。

 

 

 続々と参加者が入室してきました。我々の先生や、他大のよく知る先生、その生徒など、日本人も非常に多かったのですが、日本人同士以外はほぼ英語で会話が繰り広げられていたので、とても肩身が狭かったです。

 他大の生徒の方とも話すのですが、両者とも今日発表なので、どこか会話に100%集中できていない感じでした。正直この「話す相手がいないけど一人で座ってるわけにもいかない」みたいなふわふわした状況もかなりしんどかったです。

 

【3-3】ほかの人の発表が始まる、ひたすら出番待ち

 8時15分、発表が始まりました。ここからはひたすら出番待ちになります。僕の出番は11時50分、めちゃくちゃ後半です。この約3時間半のあいだに、先輩方の発表も入っています。

 ここで、僕のとれる選択肢は2つありました。一つ目は、「会場を出て適当なスペースで発表の練習をする」、二つ目は、「ひたすら自分の出番までほかの人の発表をきく」です。僕は後者を選択しました。というのも、やはり発表の雰囲気がわかっていないと、自分の発表が浮いてします可能性があるからです。

 発表を聞いていると、二つ良い事実を見つけました。一つ目は、意外と質問を聞き取れなかったり、英語のコミュニケーションでトラブルがある人がいるということです。日本人学生はもちろんですが、他の国の人でも「Sorry, I don't follow you」と言っていたりして安心できました。二つ目は、プレゼンの最初に笑いをとっている人なんてほとんどいないということです。先生から事前に「最初に笑いをとるものだ」と吹き込まれていたのでそれが当然なのかと思っていましたが、全くそんなことはなく、まじめな発表ばかりでした。

 ですが、そういう安心はありつつも、この3時間半は基本苦行でした。自分の発表の心配で手いっぱいになり、他人の発表なんて聞けるはずもなく、(ダメなことなんですが)ずっとスマホでカジノの記事を見ていました。

 

【3-4】闇に電流走る

 のこり1時間半ほどになってきたところでふと、一つのアイデアが浮かびました。それは「意外とカジュアルな学会なので、最初に『英語できないんですよ~』と言っておけばうまくいくのではないか」というものです。雰囲気を良くしておけば、暖かいムードになって、仮に質問を聞き取れなくて焦ってしまっても大丈夫な雰囲気になるのではないかと考えました。

 そこから1時間、前口上を必死に考えました。最終的に考えついたのは「私は修士一回生です」「多分このセッションで僕が一番若いです」「お手柔らかにお願いします」という案と、「私は修士一回生です」「この発表が人生で最初の発表になります」「優しくしてください」という案です。これをぐちゃぐちゃとミックスしようと画策しました。

 

【3-5】いよいよ出番が

 ついに私の出番がやってきました。壇上に立つと、案の定多くの人が座っているのが目に入りました。声が震えたりはしなかったと思ってたのですが、あとから録音していた発表を聞いていると、最初めちゃくちゃ震えてました…。檀上での足の震えが尋常じゃなかったのだけは覚えています。

 開口一番、紹介してくれたチェアマンにありがとうと伝えた後、こう切り出しました。

 「I'm ~~ from Kyoto University Japan.」

 「I'm the first grade of master」

 「This is my first presentation in my life」

 「So please be kind to me or please be gentle」

 この「in my life」のところで爆笑と温かい拍手が起こりました。その後の「kind to me」のところも笑いがおこり、即席の作戦は無事成功しました。

 

 そのあとは覚えていた原稿をすらすらと言っていくだけでした。どうしても覚えられなかったところもあったのですが、持ち込んでいた原稿を読んで乗り越えました。

 

 質問は結局その場では意味がわからなかったのですが、同行していた同じ研究室の留学生に「ここのスライドを説明すればいいんだよ」と声をかけてもらえたので、何とか乗り切ることができました。

 後々質問の内容を聞くと、あまり日本語でも説明できなかったところでしたので、仕方ないと思って割り切っています。

 

 発表が終了した後、その質問者の方がもう一度私のところにきて、懇切丁寧に疑問点を伝えてくれました。うれしかったのですが、その一方で、英語ができなくてすみませんと心底思いました。

 

【3-6】解放飯

 4か月の苦行から解放された後の昼ご飯は大事ですよね。僕と同期と一緒に日本食を食べにいきました。選ばれたのはまぜそばでした。

 

 後ほどまた触れるかもしれませんが、シンガポールってめちゃくちゃいろんなところに日本食や日本語があるんですよね。天丼や海鮮丼など、けっこう選び放題でした。

 日本ではめったにしないのにサイドメニューも頼んだりして。

 満喫しました!

 

【おわりに】

 今回の発表、私は大成功といってもいいと思います。英語ができない割にはよくやったと。やればできるんだという自信にもつながりましたし、日本の学会なんかこわくないという無敵感も手に入れました。

 その一方で、英語ができないことで、いろんな人と交流する機会を失ってるなとも感じました。義務感ではなく、危機感として「英語やらなきゃな」と思える発表になりました。

 

 何はともあれ、いったんは解放されたわけで、ここからは120%観光になります。次回は訪れた観光地を写真とともにダイジェストでまとめたいと思います!