さっきぃの休息所

大学生になり、今までの生活が一変する中で、自分が感じたことや悩んだこと、経験したことなどを綴っていきます。

【本の感想①】『ナナメの夕暮れ』

 若林正恭著『ナナメの夕暮れ』を読んだ。

 

 きっかけは『オードリーのオールナイトニッポン』だ。ラジオを通して、若林さんの性格が一般の人とは一線を画すものだと知り、それと同時に「自分と似ている部分が多々ある」と悟った。

 本も読まない、お金も出さない自分には少々手痛い出費だったが、躊躇はなかった。

 今、生活に生き辛さを感じている自分にとって、なにか人生のヒントをもらえるのではないかという期待を込めていた。

 だが、その期待が不安に変わっていくことになる。

 

 この本は、40弱の短編でできている。(連載をまとめたものだから当然である。)その短編には、主に社会に対し抱いていた疑問とそれに対する自分なりの回答、向き合い方が綴られていた。

 連載であるから、一つの話題に関して割かれたのはたった数ページであるが、その言葉には、若林さんは何年も自分と向き合い続けたんだろうなと感じさせる確かな重みがあった。

 ここまでだと、自分という人間がわからない人にとって、また大半の人間とは違うという違和感を持って生きてきた人にとって、答えを明示してくれる聖書のような本に見えるであろうが、決してそうではないというのがこの本の特徴だなと思っている。

 

 この本の中で、著者は決して「私はこういう疑問を持っていましたが、こう考えることでその疑問に悩まされることはなくなりました!ぜひお試しください!」といったスタンスをとらない。(そもそもそんなことが可能なら誰も悩まされていない。)繰り返しになるが、この本は、抱いた疑問や違和感に対して、ときに長い時間をかけ向き合っていった過程が記されているものである。そのため、解決に至らず自分の気持ちの変遷のみが描かれている話も少なくない。繰り返し言うが、決して”答え”が書かれた本ではないのである。

 

 私は、この本は自分の現状の位置によって見方が変わる本だなと感じている。現状私は、自分の環境に対し違和感や疑問を抱いて物事を斜に構えてみる傾向のある人間である。そんな今の環境に適応できない自分がこの本を読むと、「決してこの”癖”が治ることはないんだな」という絶望に近い感情を覚える。しかし例えば、これをもっと前向きな気持ちのときに読むと、違った感情が生まれるであろうというのは容易に想像できる。

 その点で、この本は「自分の成長や変化を体感することができる」本でもあるといえる。自分がどういう感情を抱くかによって、自分の今の精神状態や考え方を逆算できる。これは、自分と向き合っていくうえで極めて重要である。

 

 『ナナメの夕暮れ』は文字通り、ナナメに自分の成長の助けをしてくれるであろう。